
長らく待ち望んでいた赤ちゃんがお腹に宿り、本来ならば幸せいっぱいなはずの妊娠期間。
実は、筆者が長女を妊娠したタイミングと時を同じくして、自身の弟がうつ病を患い、さらに自殺未遂をするなど、精神的波乱に満ち溢れた妊婦生活を送ることになったのです。
この記事では、筆者のそんな壮絶な日々について語るとともに、落ち着かない妊娠期間を過ごすことが胎児に及ぼすさまざまな影響について書こうと思います。

「妊娠した喜びを思い切り感じたい」
「両親や兄弟、家族にも喜んでほしい」
筆者の妊娠は、そんな”当然”とも言える感情を抑え込むところからスタートしました。
今振り返ってみると、よく耐えられたなぁと自分でも不思議に思うほど、強い精神的ストレスを抱えた状態で乗り切った10ヶ月でした。
このつらい経験が、誰かの心を少しでも救うことができたら幸いです。
妊娠発覚~家族への報告まで

一度流産を経験し、それから約3年間妊活に励んだ筆者にとって、ようやくと言える妊娠。
私たち夫婦にとっても、もちろんそれを待ち望んでいた両親や家族親戚にとっても、それは大きな喜びに包まれるであろう出来事のはずでした。
しかし、その時すでにうつ病を患って仕事を辞め、実家に戻っていた実の弟にとっては、素直に「おめでとう」とは言えない報告だったのです。
「ごめん… 今そういう気持ちになれない…」
両親にすぐさま報告したあとで、祖母と弟に電話したときのこと。
祖母に電話を代わってもらったときの、弟の暗い声と言葉が忘れられません。
筆者は「まぁ、そうだよな…」と弟の病状を受け止めつつも、気持ちのギャップと寂しさを感じずにはいられませんでした。
妊娠期間に重なった苦悩とは

”弟がうつ病”という現実を抱えながらスタートした妊婦生活。
離れて暮らしているとは言えども、その影響は想像していた以上に重くのしかかってきました。
激務に追われて筆者に頼らざるを得なかった母
当時、仕事で重役を担っていた母は帰宅が深夜になることが多く、弟の状態についてすべての対応をとることは物理的に不可能でした。
そんな中で、離れて暮らす筆者は、弟とのLINEでの会話を通した”状況確認”や”元気づけ”のような役割を自然と担っていました。
”うつ病”を受け止めきれなかった祖母と父
それに加えて、”うつ病”を理解しようとはしているものの、息子の状態を受け止めきれない祖母と父。
決して”怠け”ではないとわかっていても、イライラして当たったり、怒ったりすることがありました。
側にいる家族が皆葛藤している様子を毎日のように母から聞かされていた筆者は、心配や不安、弟に対するもどかしさなどといったストレスをため込んでいきました。
つわり・初めての出産に対する不安
弟に一日も早く元気を取り戻してもらいたいと願いつつも、一番の不安は”出産”に関することでした。
筆者にとって初めての妊娠。
自分の身体と心の変化についていくのも大変な状態で家族のケアをすることは、自分の望みではあったものの、胎児への負担を考えれば無理すべきでないことは明らかでした。
ホルモンバランスの乱れ
お腹の子が第一とはいえ、実の弟の病状を気にしないでいるのは難しく、状況を聞いては一喜一憂していたため、相当な不安やストレスを毎日感じていました。
特に筆者の場合、妊娠発覚後すぐからホルモンバランスの影響を大きく受けており、情緒が不安定になることが多かったため、ストレスのはけ口が夫に向かうこともありました。
自殺未遂に至った弟
「実は今日、●●(弟)のマンションに駆けつけて…」
母から電話をもらったときのことは今でも忘れられません。
そこまで思い詰めていた弟を時に責めてしまった自分に対する嫌悪感や後悔、この先どうなってしまうのかという不安、いつまでも対応に追われる両親など、心配は尽きませんでした。
ストレスを抱えた妊娠期間の過ごし方

抱えきれないほどのストレスとともに過ごした約10ヶ月の妊娠期間。
「このままじゃお腹の子に悪い影響が…」
「本当はもっと幸せを感じたいのに…」
と毎日ネガティブな気持ちでいっぱいでした。
しかし、
「このままじゃためだ」
「なんとかして気持ちを前に向けないと」
というエネルギーは失っていなかった筆者。

そんな中、少しでもつらい気持ちを和らげるために筆者がしていたのは、無理してストレスを”ゼロ”にしようとしないことでした。
ストレスを抱えたままでも、自分と赤ちゃんを守るために取り入れた対処法を詳しくお伝えします。
ストレスを感じている自分を責めない
妊娠中はホルモンバランスの変化により、いつも以上に感情が不安定になりやすいもの。
例えば、以下のような反応は珍しいことではありません。
「こんなことで落ち込んでいるようじゃダメだ」
「赤ちゃんに悪影響だから前向きにならなきゃ」
と思い詰めて、かえってストレスが強くなっていくのを自分でも感じていました。
そのため、まずは「今は大変な時期だから、こう感じるのは仕方ない」と自分を認めることから始めました。
一人で抱え込まない
ストレスが長く続くほど、心身への負担は大きくなっていきました。そんなとき、私が唯一相談できた相手が、”夫”です。
悩みの内容が内容なだけに、親しい友人に話すのは勇気が必要でした。でも、家庭の内情をすべて理解してくれている夫になら話すことができたのです。
その際に気をつけたのは、「解決してもらう」ことよりも、気持ちを軽くするために「話を聞いてもらう」こと。
毎日その日の出来事や気持ちを口に出し、モヤモヤしたまま一日を終えないことだけに重点を置きました。
完璧な妊婦を目指さない
妊娠中は、
などやることがたくさんあります。
これに加えて、SNSでキラキラした妊婦生活を送る人の投稿を見ては、「私もこうしなきゃ」「同じように色々グッズを揃えたい」などと心の焦りが生まれていました。
しかし筆者は「そんなことばかりに追われていては心がもたない」と感じ、家事を休んだり、出産準備に必要以上のこだわりをもつことをやめました。
「今の自分にできる範囲で十分」「欲しいものを揃えるのは産後でもいい」という考え方が、ストレス軽減につながっていったのです。
睡眠を最優先にする
安定期に入ってもしばらくつわりが続き、6ヶ月目に入るまで睡眠不足と疲労感に悩まされていた筆者。
この睡眠不足が、不安やイライラ、抗うつ気分を強めていたように思います。
そこで、少しでも睡魔を感じたときには時間に関係なく眠るようにしました。また、眠りやすくするために実践し、役に立った項目を以下に記しておきます。
- 寝る前にスマホを見ない
- 家事よりも昼寝を優先する
- 抱き枕などで楽な姿勢を探す
- 気分の良い日中に散歩して身体を疲れさせる
- 時には食べたいものをたらふく食べる
- お風呂に浸かって身体をあたためる
妊婦の精神的ダメージが及ぼす胎児への影響

家族の自殺未遂やうつ病といったストレスを抱えて妊娠生活を送ることは、誰にとっても大きな負担。
そのような状況で強いストレスを感じるのは人間にとって自然な反応かもしれませんが、筆者は「自分のせいで赤ちゃんに取り返しのつかないことが起きるのでは」と自分を責めました。
そんなとき、「強いストレスが必ずしも赤ちゃんに重大な影響を及ぼすわけではない」という話を担当医の方から聞きました。
多くの場合、赤ちゃんは子宮や胎盤によって守られているからだそうです。
このように、筆者が聞いた胎児への影響に関することを、ここに記したいと思います。
現在わかっていること
研究では、「妊娠中の強いストレスが胎児や出生後の子どもに影響する可能性がある」ことが示されています。
しかし、その影響は一般的に「リスクが少し高くなる」という程度で、「必ず悪影響が出る」というものではありません。
胎児の発育には、以下のように多くの要因が関わっています。
- 母体の健康状態
- 栄養状態
- 睡眠
- 喫煙・飲酒の有無
- 妊娠週数
- 遺伝的要因
- 医療ケア
したがって、ストレスだけで将来が決まるわけではないのだそうです。

とは言え、妊娠中の身としては胎児への悪影響はどうしても気になってしまいますよね。
ここからは、影響の”可能性”が考えられているものを詳しく見ていきましょう。
早産や低出生体重のリスクがやや高くなる
妊娠中の慢性的な強いストレスや不安・うつ状態は、胎児に対して以下のような関連が報告されています。
ただし、多くの研究ではリスクの増加は比較的小さく、適切な産科管理を受けることで問題なく経過をたどる方も多くいます。
胎児の発育への影響
妊娠中に強いストレスが長期間続くと、胎盤を介したホルモン環境の変化などを通じて、胎児の発育に影響する可能性が研究されています。
しかし、胎盤にはストレスホルモンの一部を分解する働きもあり、赤ちゃんはある程度守られていることもわかっています。
子どもの情緒や行動への影響
お腹の中にいるときに母親が強いストレスを抱えていた場合、出生後の子どもに以下のような関連が見られたという研究もあります。
- 不安になりやすい
- 注意力の問題
- 感情調整の難しさ
ただし、”関連があること”と、”原因であること”は違います。
安定した家庭環境で温かい養育を受けた子どもの発達は十分に良い方向へ変化していくことも分かっています。
どの程度の悪影響なのか?
これは、妊娠中の女性にとって最も気になる点だと思います。
現在の医学では、「これだけストレスがあれば○%の確率で赤ちゃんに悪影響が出る」とは言えません。
多くの研究では、例えば早産や低出生体重については、ストレスが強い群で相対的なリスクが上昇することが示されていることも事実です。
しかし、もともとの発生率がそれほど高くないため、絶対的な増加は数%程度であることが多いと報告されています。
つまり、「リスクはゼロではない」「しかし極端に高くなるわけでもない」というのが現在の医学的な結論です。
むしろ重要なのは「その後のケア」
近年の研究では、妊娠中に強いストレスがあっても、
- 十分な睡眠
- 周囲からの支援
- 必要なら精神科や心療内科での治療
- 産科での継続的なフォロー
- 出産後の愛着形成
などによって、母子ともに良好な経過をたどるケースが多いことが分かっています。
つまり、「妊娠中に大変な出来事があったからと言って子どもの将来が決まるわけではない」ということです。
まとめ
もし妊娠中につらい出来事が重なったのであれば、お母さん自身が「これくらいで相談してはいけない」と我慢する必要はありません。
産婦人科では、「妊娠中の心の健康も大切な診療の一部」として、必要に応じて精神科や心理職、地域の支援につなぐ体制が整えられていることもあります。
強いストレスそのもの以上に、お母さんが孤立したまま支援を受けられない状態が続くことのほうが心配です。
早めに相談し、周囲の力を借りることは、お母さん自身だけでなく赤ちゃんにとっても大切なケアなのです。

次回の記事では、
について書きたいと思います。
もし筆者と同じような悩みを抱えているなら、心を軽くするためにもぜひ読んでみてくださいね。
あとから読み返したいときに活用してくださいね。


